漫画『ひきだしにテラリウム』の感想の続きになります。『ダンジョン飯』の著者、九井諒子先生の掌編集です。
様々な不思議な世界が描かれ、読んでいるとそこにすぅっと引き込まれてしまいます。もし自分がその世界にいたら、と考えるのはとても楽しいです。
※ 感想の中で内容に触れることがありますので、未読の方はご注意ください。
※ 三つに分けて投稿しています。
『すれ違わない』『未来人』
未来世界には自分の本心を相手に伝えることができる道具が存在する…。
これ、便利なんだろうけど、言っちゃいけない本音まで伝わっちゃったらどうするんだろうと思ってしまうのは、私の心が荒んでいるからでしょうか(笑)もちろんポジティブな思いだけが伝わるならいいんですよ。
『湖底の春』
まるで童話やおとぎ話に出てくる世界のよう。美しい絵に引き込まれます。
青年が飛び込んでしまうところで一瞬暗い結末を想像してどきっとするのですが、ちゃんと「らしい」オチがついててほっとしました。
『遺恨を残す』
SF風で不思議な気持ちになるお話です。星新一先生のショートショートを読んだ時のような。
この物語に描かれているような事柄に限らず、古いものが新しいものへと変わっていくのは自然な流れなのかもしれません。けれど、消えてしまうのはなにか「寂しい」。すごくわかります。今までずっとそこに存在して、必要だったのだろうし、多くの人のためになっていたのだろうし、自分の思い入れがある場合もある…。
たとえなくなるとしても敬意や感謝をもっていたいなと思いました。
『秋月』
こちらもSFっぽい世界のお話。
安全だけど管理された世界か、危険はあるけど自由な世界か。…のようなテーマの作品はよくありますが、個人的な印象では、管理された社会を悪く描きがちなのかなと思います。そういう作品では怪しい計画の下で運営されてたり、本当に悪い人間が管理してたり、社会が腐敗して崩壊しかかってたりするから、そりゃ自由を叫びたくなるでしょう。(そういう物語も好きです。)
だけど、もしそれが善意によって構築されていて、そこに生きる人々に本当に配慮されたものだったなら、管理された世界を選択する人もいると思います。それを選ぶのも「自由」だと。
作中の彼女が言っているように、「愛」を感じればそこを好きにだってなると思う。
まだまだ魅力的なお話がありますがこの辺で。
楽しかった~!