漫画『ひきだしにテラリウム』の感想の続きになります。『ダンジョン飯』の著者、九井諒子先生の掌編集です。
収録されている中に、ページ数にすると2~4ページくらいの作品がいくつかあるのですが、とても短いのにどの作品にもしっかりした世界や物語を感じました。短いからこそ想像力が掻き立てられます。
※ 感想の中で内容に触れることがありますので、未読の方はご注意ください。
※ 三つに分けて投稿しています。
『恋』
短い作品の中で『恋』は一番心に残ったお話かもしれません。見開き1ページ分の長さです。
アンドロイドが、恋をしたかもしれないと博士に相談するお話です。女性型のアンドロイドが美しい…。
恋をすると、確かに通常の状態ではいられません。思ってもみなかった言動をしたり、おかしなことを考えたり。後になってなんであんな気持ちになったんだろうとわからなくなる程に。
プログラムされたもの=「通常」なら、恋している状態はバグみたいなものってその通りだと思います。ただサクッと処理されちゃうのは悲しいし、もったいないなと思いました。予期せぬ進化なんてしそうじゃないですか。人間なら魅力的になったり精神的に成長できたりとか。アンドロイドたちは一体何回恋心を消去したのでしょう…。
ただ、恋をするととてつもなくしんどい気持ちになることもあるから、すぐに平穏な状態になるなら取り除いてほしいと望むかもしれません。恋に限らず、心身に不調をきたすようなイレギュラーな感情をアンドロイドだから簡単に消せるというなら、それはとてもうらやましいことだ、とも思えます。
結局どちらが幸せなんだろう、と考えてしまった作品でした。
『TARABAGANI』
タラバガニはカニじゃない。その昔それを初めて知った時は、「いや、カニでしょ、カニでいいでしょ」と思いました…。(学生の頃の話ですが。)
見た目と中身が違うっていうのは、意識してる以上に混乱するものなのかもしれませんね。変な夢をみちゃうくらいに。
『こんな山奥に』
こちらは4ページのお話。
外で食事をしている時など、たまに意図せず会話を聞いてしまうことってないですか。聞かないようにしようと思っても、大声だと耳に入ってきてしまって。そしてその内容に心の中でツッコミを入れてしまうこと、「あ~あるある」と思いながら読みました。
ただこのお話ってそれだけではなくて……、ひょっとしたら化かされてるのかも、と思わされるのがおもしろいです。
つづく…